実践交流会 参加者からの感想

三輪晃久(四日市公害と環境未来館解説員)

 四日市公害と環境未来館の解説員である私にとって、示唆に富むヒントを多々いただいた有意義な交流会となり、発表者の方々には感謝の言葉しかありません。そこから導かれた感想を以下に述べさせてもらいます。

①塩浜小の子どもたちには目前のコンビナートやそびえ立つ煙突はあることが当たり前過ぎて、少しの疑問もはさむ余地のない日常ですが、それが授業を通して、家族の人に当時の公害や学校生活の様子を聞き取りすることで、当たり前の存在が少し違って見えてくる。クラスメートの発言からさらに違った見え方も加わって、それぞれの多様性にも気づくところで、澤井さんの四日市公害との取り組み、その生き様に出会う。もし、自分がその時代に生きていたらどうするだろうと自問しないではいられなくなる。 
 「四日市公害とは何か」も大切なテーマですが、「自分が四日市公害とどう向き合うか」はもっと深いテーマだと思いました。阪倉さんの、澤井さんの生き様への問いかけとリスペクトがこの授業実践や『四日市公害と人権』のベースにあることがよく分かりました。

実践交流会を通して感じたこと

阪倉芳一

1.「澤井余志郎さんの生き様に学ぶ授業」実践発表をしてみて

 発表前に、資料やスライドを読み直していると、「コンビナートで働いていた澤井余志郎さん」という誤りに引っかかりました。子どもが調べたのだからそういうこともあるか、と思っていたのですが、そもそも、澤井余志郎さんをどれだけの人が知っているのでしょうか?「四日市公害が生んだ歴史的遺産」「黒子、助っ人、記録人、語り部・・・」などいろいろな肩書きがありますが、6年前に亡くなられた澤井さんに出会っている人はどれくらいいるのでしょうか?

 この点が気になって、実践発表の前に、澤井さんとの出会いなどを話す時間を多く割いてしまいました。肝心の澤井余志郎さんの生き様に学ぶ授業はどんなのだったか、子どもたちはどのような反応を示したのかを発表できませんでした。反省しています。 

2.四日市公害学習の取り組みを財産として

 各校で行われている実践は、それぞれ個性があって興味深いものでした。自分の実践だけでなく、色々な実践と交流することは、自分の実践の幅を広げていくものだと感じました。

 また、「四日市公害と人権」がいろんな学校で活用されていることをうれしく思いました。これからも、このような実践が積み重ねられ、四日市公害学習が広がっていくことを願います。

 四日市公害をどのように子どもたちに学ばせようかと迷う方がいるなら、この実践交流会の資料を是非参考にしてほしいと思います。

四日市公害訴訟判決49周年

四日市公害を忘れないために

四日市公害学習 実践交流会

 日時:8月7日(土)13:00開場 13:30開始 
 会場:四日市市立塩浜小学校 2階 視聴覚室

四日市公害はその発生からすでに60年。公害患者が加害企業を訴えた裁判で、全面勝訴を勝ち取った判決の日から49年が経過しました。四日市の空はかつての大気汚染から改善されてきています。行政や企業の努力があったのですが、やはり原告をはじめとした患者さんのがんばりや支援の人々のたたかいがあったからこそ、現在の四日市があるわけです。しかし、この状況に安心し傍観することなく、歴史を振り返り次世代の人々に語り継いでいく必要があります。それは自ら学ぶことにもつながります。
 「四日市公害と環境未来館」が開設し、館内だけでなく小中学校現場での公害学習も進められています。そこでどのような学習の取り組みがあり、子どもたちがどのように学んでいるのかを、互いに情報を共有し合いたいと思います。県内の4校から日々の実践を報告いただきます。意見交換の時間も設けます。ぜひご参加いただき有意義な一日をお過ごしください。

発表内容

・塩浜小学校での公害学習
・マンガ「ソラノイト」を活用した公害学習・
・人権学習としての公害学習
・四日市市外で学ぶ公害学習

注意事項

・定員を30名程度としています。事前申し込みをお願いします。
・新型コロナウィルス感染拡大防止のため、マスク着用、会場での検温、消毒にご協力ください。

 8月7日、四日市公害学習実践交流会は、コロナ禍と猛暑でしたが、30名フル参加で終えることが出来ました。
 4校から報告をいただきました。塩浜小学校=地元ならではの歴史や患者家族のようすもわかりました。富田小=マンガ「ソラノイト」の教材化は会場が教室化してユニークな報告となりました。保々小=人権教育の一環としての公害教育。人を思いやる気持ちの大切さ、若い先生からの報告で頼もしく思いました。津市内=四日市から遠い津市内でどう考えさせるのか。コンビナート企業で働く労働者の生き方を考えよう。それぞれ個性が生かされた実践報告でした。感想文をまとめ後日「報告集」を作ります。ご希望の方はご連絡ください。(四日市公害学習 実践交流会報告集から一部抜粋)

 終了後は塩浜小展望室に上がり、周辺のコンビナートなどを眺望しながら「市民塾」が解説しました。好評でした。(市民塾Facebookより)

 

 四日市公害がひどいころの塩浜小学校では、どのような取り組みが行われていたのでしょうか。IMG 3029 「公害に負けない」体づくりのために、ありとあらゆる方策がとられたようです。現在では、考えられないような取り組みも行われており、それだけ子供の健康を守らなければならないという強い危機感を想起できます。
 「公害に負けない」体づくりは、子どもたちにとっては、とても大変なことでした。「これだけの取り組みをしていても、公害のほうが強い。」と作文に書いている子がいました。

 公害地の健康教育 1966.12
 1.公害の現状
  私たちの住んでいる四日市は、ここ数年の間に石油コンビナートの町として飛躍的な発展をした。
  この繁栄をもたらした落とし子が、いまや四日市を全国的に有名にした公害である。
  四日市の公害はどんなものか、ご存じない方が多いのではなかろうか。
  四日市の公害は、主として亜硫酸ガスによる人体への影響であるが、この他に頭が痛くなり、吐き気をもよおし、目から涙が出て止まらない、といった影響を与えるくさい臭気も多く、この臭気のひどいときは、いわゆる「黄色いマスク」をしても、教室内の空気清浄機をフル運転しても堪えられないので、郊外へ集団避難する、といった処置もとっている。しかし恐ろしいのは何といっても亜硫酸ガスである。
  これは、普通の状態(3ppm以下)では、においがしないので、平気で吸っているが、知らず知らずのうちに体をむしばんでいるのである。(大気汚染の状況 磯津地区のひどい時でも0.4ppm~0.6ppmなので、3ppmは殺人的な値となる)

 

詳細はこちら(PDFファイル)